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意匠の専門家が解説します!
意匠登録の専門家が、出願書類の書き方、留意点、意匠法特有の制度、登録料など、分かりやすく解説します。
意匠法の一問一答
1.意匠法の保護対象
2.意匠の構成要件
3.部分意匠の成立要件
4.工業上利用できるとは?
5.容易に創作することができる意匠の例
6.先願について
7.出願の変更について
8.補正について
9.出願の分割について
10.補正却下決定不服審判について
11.通常実施権について
12.意匠権の効力とは?
13.補正却下決定不服審判
1.意匠法の保護対象
意匠の創作とは、特許法における発明や実用新案法における考案と同じく、抽象的なものです。しかし発明や考案が自然法則を利用した技術的思想の創作であるのに比べ、意匠は、その美的な側面からアイディアを把握するものです。意匠法で意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいいます。美感をおこさせるものとは、美術品などの高尚な美を要求するものではなく、
なんらかの美的感覚
を起こさせるものであれば足ります。
2.意匠の構成要件
意匠の構成要件は、
①
法上の物品であること
②
物品自体の形態であること
③
視覚に訴えかけるものであること
④
視覚を通じて美観を起こさせるものであること
→①法上の物品とは、市場で流通する有体物たる動産であって、量産性、代替性を有するものをいいます。物品として認められないものは、例えば不動産、固体以外のもの(電気、光、熱などの無体物)、粉状物・粒状物、物品の一部であるものは、物品とは認められません。
→②物品自体の形態と認められないものの例としては、販売展示効果を目的としたもの、例えば物品がハンカチの場合、販売展示効果を目的としてハンカチを結んでできた花の形態は物品自体の形態とは認められません。
→③視覚に訴えかけるものと認められないものの例としては、粉状物や粉状物の一単位で、その一単位が微細であるために肉眼によってはその形態を認識できないものは、視覚に訴える者とは認められません。ただし、取引に際して拡大鏡などを用いて拡大して観察することが通常である場合には、物品に該当します。また粒状物や粉状物であっても、その結合したものが固定した形態を有するもの、例えば角砂糖などは物品として認められます。
→④視覚を通じて美観を起こさせないものの例としては、作用効果を目的としたものであって美感をほとんど起こさせないもの、意匠としてまとまりがなく煩雑な感じを与えるだけで美感をほとんど起こさせないものが挙げられます。
3.部分意匠の成立要件
部分意匠の成立要件は、
①
部分意匠に係る物品が法上の物品であること
②
物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分であること
③
他の意匠と対比の対象となり得る部分であること
が必要です。
4.工業上利用できるとは?
工業上利用できるとは、工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得るということであり、現実に工業上利用されていることを要せず、その可能性を有していれば足ります。また工業的利用することができる意匠に該当するためには、
①
意匠を構成するものであること
②
意匠が具体的なものであること
③
工業上利用することができるものであること
が必要です。
→②意匠が具体的なものであることとは、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面などから
・意匠に係る物品の使用目的、使用の状況等に基づく用途及び機能
・意匠に係る物品の形態についての具体的な内容が直接的に導き出されなくてはなりません。
工業上利用することができないものと認められないものの例とは、
・自然物を意匠の主たる要素として使用したもので量産できないもの
・土地建物など動産
・純粋美術の分野に属する著作物などが該当します。
5.容易に創作することができる意匠の例
①
置換の意匠
②
寄せ集めの意匠
③
配置の変更による意匠
④
構成比率の変更または連続する単位数の増減による意匠
⑤
公然知られた意匠をほとんどそのまま表したに過ぎない意匠
⑥
商慣行上の転用による意匠
→①置換の意匠とは、意匠の構成要素の一部を他の意匠に置き換えることをいいます。公然知られた意匠の特定の構成要素を
当業者にとってありふれた手法
により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したに過ぎない意匠をいいます。
→②寄せ集めの意匠とは、複数の意匠を組み合わせて一の意匠を構成することをいう。複数の公然知られた意匠を
当業者にとってありふれた手法
により寄せ集めたに過ぎない意匠をいいます。
→③配置の変更による意匠とは、公然知られた意匠の構成要素の配置を
当業者にとってありふれた手法
により変更したに過ぎない意匠をいいます。
→④構成比率の変更または連続する単位数の増減による意匠とは、公然知られた意匠の全部または一部の構成比率や公然知られた意匠の繰り返し連続する構成要素の単位数を
当業者にとってありふれた手法
により変更したに過ぎない意匠をいいます。例えば回転警告灯の警告灯単位体の積み重ねの数を減少させたものがあります。
→⑤公然知られた意匠をほとんどそのまま表したに過ぎない意匠とは、公然知られた形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合をほとんどそのまま物品の形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合に表したという
当業者にとってありふれた手法
により創作された意匠をいいます。例えばピーマンの形状をそのまま表したペーパーウエイトがあります。
→⑥商慣行上の転用による意匠とは、非類似の物品間に
当業者のとって転用の商慣行というありふれた手法
がある場合において転用された意匠をいいます。例えばオートバイの形状をオートバイの玩具に転用したものがあります。
6.先願について
同一又は類似の意匠について異なった日に二以上の意匠登録出願があったときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができます。意匠の類似の範囲にまで先願の地位を認める理由は、意匠権は特許権や実用新案権と同じく抽象的なアイディアを保護するものであり、特許権や実用新案権の効力が発明や考案の同一性の範囲に及び得るので、意匠権についても、同様の構成で類似の意匠にまで効力が及ぶことになっています。このことから、先願の地位も類似の意匠について認められることとなります。
7.出願の変更について
特許出願人は、その特許出願を意匠登録出願に変更することができます。変更時期は、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があった日から3月以内です。物品の形状について発明をしてそれが技術的に効果があるものと考えて特許出願をしたが、拒絶されたので、その形状の美的か面について意匠登録出願を受けようとする場合に変更する場合があります。 また実用新案登録出願人もその実用新案登録出願を意匠登録出願に変更することができます。
8.補正について
補正とは、出願書類等に記載不備がある場合に、自発的に又は補正命令により出願書類等の補充又は訂正をすることをいいます。 意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続をした者は、事件が審査、審判又は再審に係属している場合に限り補正をすることができます。補正は、願書の記載又は願書に添付した図面、写真、ひな形若しくは見本についてすることができます。補正は、出願に係る意匠の要旨を変更しない範囲内においてする必要があります。意匠の要旨とは、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、願書の記載又は願書に添付した図面等から直接的に導き出すことができる具体的な意匠の内容をいいます。また意匠の要旨を変更する補正とは、
①
その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて、願書の記載又は願書に添付した図面等から当然導き出すことができる同一の範囲を超えて変更するものと認められ場合
②
出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものと認められる場合
のことをいいます。
具体的には、例えば、意匠に係る物品を同一物品以外の物品に物品名を変更する補正や、部分意匠に関する出願でないことが明から場合に、部分意匠の欄を追加するような補正は要旨変更補正とされます。
9.出願の分割について
出願の分割とは、二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることをいいます。分割できる時期は、出願が審査、審判、再審係属中に限りすることができます。二以上の意匠を包含する意匠登録出願とは、
7条違反
・図面に複数の物品の形態が記載荒れている場合
・願書の意匠に係る物品欄に総括名称等物品の区分によらない物品が記載されている場合
・願書の意匠に係る物品欄に複数の物品が記載されている場合
8条違反
・組物の意匠登録出願を行ったものの組物全体として統一がない等組物としての要件を満たしていない場合
10.補正が却下された場合の対処
審査の段階で、補正が要旨変更と判断された場合、その補正は決定をもって却下されます。その場合、意匠登録出願人は、 ①再度補正、②補正却下決定不服審判の請求、③補正却下後の新たな出願、④放置、⑤別途出願を行うことができます。 補正却下決定不服審判は、却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内に行うことができます。また、意匠登録出願人は、却下の決定の謄本の送達があった日から3月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をすることができます。 一方、拒絶査定不服審判において補正却下の決定がなされた場合には、東京高等裁判所に補正却下の決定に対する訴えを提起することができます。期間は、補正却下の決定の謄本の送達があった日から30日以内です。
11.通常実施権について
許諾によって発生する通常実地権以外にも、意匠法の規定による通常実施権もあります。
①職務創作による通常実施権
②29条の先使用による通所実施権
③29条の2の先出願による通常実施権
④意匠権の移転の登録前の実施による通常実施権
⑤無効審判の請求登録前の実施による通常実施権
⑥意匠権等の存続期間満了後の通常実施権
⑦再審により回復等した意匠権についての通常実施権
このうち意匠権者が相当の対価を受ける権利を有するものは、
③
29条の2の先出願
による通常実施権
④意匠権の移転の登録前の実施による通常実施権
⑤無効審判の請求登録前の実施による通常実施権
⑥意匠権等の存続期間満了後の通常実施権の場合の実施権者等
12.意匠権の効力とは?
意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します。ただし、その意匠権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する範囲においては、実施することができません。 意匠権の効力は類似の範囲にまで及びます。意匠権は、特許権や実用新案権と同じく抽象的なアイディアを保護するものであり、特許権や実用新案権の効力は、
発明や考案の同一性の範囲に及びうる
のであるから、意匠権についても同様の構成として「登録意匠及びこれに類似する意匠」を業として実施することができるものとしています。
13.補正却下決定不服審判
意匠法には補正却下決定不服審判という審判があります。当該審判は特許法にはありません。意匠法においては、特許法でのような広範な範囲の補正が認められておらず、補正がなされることによる権利付与の遅延にはつながりません。また、願書の記載又は願書に添付した図面等に補正を加えることはその要旨の変更となり得る場合がほとんどであり、要旨変更かどうかの判断に
解釈が入り込む余地がなく客観的な判断
が可能となり、審理においても迅速が権利付与の妨げにはなりません。そこで意匠法では補正却下決定不服審判の制度を採用しています。
一歩で、特許法にはあって意匠法にない審判としては訂正審判が挙げられます。なぜ意匠法において訂正審判が認められていないのかは以下の理由があります。先ず、意匠については請求の範囲の減縮という概念がなく、訂正を認めても図面等の訂正はそのまま意匠の要旨変更となる場合がほとんどで、訂正審判を認めることの
実益がありません
。次に、願書に添付した図面等に不一致がある場合であっても、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者の
常識をもって合理的に善解しうる余地があるか、または意匠の認定に支障を生じない
ものだからです。次に、意匠法においては権利客体の把握が容易であり、
不明確な箇所や誤りを残したまま登録されることが少ない
からです。